Luke Randomwalker のブログ

経済と投資のこと

年の初めにNISA枠を(ほぼ)使い切る方法

すぐにNISA枠を使い切りたい!

NISAで1年に投資できる枠は、成長投資枠で240万円、つみたて枠で120万円の計360万円です。資金がない時や、購入時期を分散したいときには積立投資が強い味方になりますが、すぐに投資したい余剰資金が240万円よりも多い時、毎月コツコツ積み立てるのではなく「早く投資対象の商品を買いたい!」と思うこともありますよね。

実は、一工夫するだけで、年初にNISA枠を使い切ってしまうことができます。

1月だけ増額する

多くの証券会社では、毎月の積立投資額に加えて、特定の月(たいていは年2回程度)だけ積立額を増額できます。これを利用すれば、1月につみたて枠のほとんどを投資しきってしまうことが可能になります。

具体例を挙げましょう。毎月の投資金額が100円以上でなければならないとします。年間では1,200円になります。残りの120万円 - 1,200円 = 1,198,800円を1月の増額ぶんとしてしまえば、1月だけでほとんどNISAの積立枠を使い切ることが可能になります。(2月以降に残る枠は、1,100円だけになります。)

積立投資の買付日も自由に設定できる証券会社がほとんです。月の途中からでも、あるいは2月や3月でも、同様のやり方で「なるべく早くNISA枠を使い切る」ことが可能です。

たとえば、3月の10日にNISAつみたて枠が120万円まるまる残っている場合、残りの10ヶ月に100円ずつ積み立てる設定をすると残りが1,199,000円になりますので、3月を増額月とし、投資信託などの買い付けに要する期間の余裕を十分見た日付(たとえば3月17日)にこの金額を買い付けるように設定すればよいでしょう。

余剰資金を、一刻も早くNISAで投資したい人に!

余剰資金をなるべく早く投資したい・NISA枠を年末まで余らせるのはもったいない・市場に参加しないリスクを重視する。そういう方のための、ちょっとしたワザのご紹介でした。

逆に、買い付けの時期を分散したい方や、積み立てる資金を毎月少しづつ捻出する方は、もちろん各月に均等に買い付けるのも良いと思います。

ご参考になれば幸いです。

特定口座の取引を確定申告すると大損することがあるという話

特定口座で保有している株式や投資信託などの金融商品(上場株式等)の売却益や配当金は、口座ごとに源泉徴収あり・なしを選ぶことができます。「源泉徴収あり」を選択した場合には、特に何も手続きしなくても納税は完了しているのですが、必要な場合には確定申告することができますよね。 たとえば、複数の金融機関の特定口座にまたがって損益通算を行いたい場合や、外国株式の配当金や売却益について国税額控除を受けたければ確定申告を行う必要があります。(最近では、証券会社等が発行した特定口座年間取引報告書の電子データを使ってe-TAXで確定申告すれば、記入する量はかなり少なくてすむでしょう。)

また、他の所得も含めた所得が少ない場合は、確定申告して総合課税を選択したほうが源泉徴収の税率(20.315%)よりも税率が下がる可能性があります。(参考: タックスアンサー

しかし、うっかり確定申告して「還付金を得てシメシメ…」と思っていると、翌年に思いがけないしっぺ返しを食らうことがあります。国民健康保険料の算出に用いられる前年度の所得は、確定申告するかどうかで変わってくるからです。

これは、よく考えると実に不思議な話です。「源泉徴収あり」の口座では、確定申告しなくても税金(所得税地方税)を払っていることに違いはないわけです。払っている地方税の金額を自治体は把握しているはずです。それなのに、上場株式等の譲渡所得や配当所得については、確定申告しない限り国民健康保険の所得割額の算定の際に計上しないことになっているのです。

川崎市のホームページより

川崎市 : 上場株式等に係る配当所得等の課税方式と国民健康保険料について

(他の自治体でも同様と思われます。)

国民健康保険料の所得割額の率は自治体によって異なりますが、仮に10%とすると、たとえば500万円の譲渡所得を確定申告するかしないかで、国民健康保険料が最大50万円違ってくることになります。

国民健康保険の加入者の方が、上場株式等の譲渡所得や配当所得を確定申告する場合はご注意を! …という話でした。

追記: やはり政府でもこの変なルールは問題視しているようです。
社会保障審議会医療保険部会における議論の整理について (p.15)

第129回社会保障審議会介護保険部会|厚生労働省 (資料2、p.32)

いずれ解消されて、「確定申告すると大損」ということはなくなるのでしょう(確定申告してもしなくても取られるようになる)。

証券口座の不正アクセス対策の決定版!? パスキーの解説と各社の対応状況

今年の前半から、証券会社の口座が乗っ取られるという被害の報道が相次いでいました。
www.ntt.com

証券各社は、多要素認証などのログイン時のセキュリティを強化しましたが、それでも完全には防げないということで、不安な思いをしていた投資家の方も多いのではないかと思います。日本証券業協会は10月にガイドラインを改正し、パスワードにかわる認証方式であるパスキー等の導入を必須化しました。

「インターネット取引における不正アクセス等防止に向けたガイドライン」の改正について(日本証券業協会)

ログイン時、出金時、出金先銀行口座の変更時など、重要な操作時におけるフィッシングに耐性のある多要素認証(例:パスキーによる認証、PKI(公開鍵基盤)をベースとした認証)の実装及び必須化(デフォルトとして設定)する。

この記事では、パスキーの原理について簡単に解説し、2025年11月現在の証券各社の対応状況について説明します。

  • パスキーとは?
    • 1. 準備
    • 2. 認証
  • パスキーの利点
  • バイスごとのパスキーの利用方法
  • ネット証券各社の対応状況
  • その他証券会社の対応状況
  • まとめ

パスキーとは?

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旧NISA枠の資産を売るなら年内に!

5年の非課税期間が過ぎると課税口座に移行

2023年までのNISA制度(旧NISAと呼ぶことにします)では、非課税期間が5年までです。たとえば2019年のNISA枠(最大で簿価120万円)で買い付けた上場株式等は、2023年中に売却しない限り、2023年末に強制的に課税口座に払出されることになります。

だとしても、払出し時点の価格で取得したことになるのだから、すぐ売れば譲渡益はゼロなので課税されないのでは?

そう思っていた時期が私にもありました…

同じ銘柄を課税口座で既に保有していると合算される!

払出されるのと同じ上場株式等を課税口座で保有していないならばたしかに、すぐに売れば譲渡益は(数日ぶんの値動きはあるかもしれませんがほぼ)ゼロです。しかし、同じ銘柄を課税口座で既に保有していると、合算して平均取得単価を計算することになります。


具体的な例で考えましょう。NISAで保有している時価200万円の株式100株が非課税期間終了を迎えて課税口座に移行するとします。このとき、取得価額は200万円です。これをすぐに200万円で売却できたとするならば譲渡益はゼロで、税金もかかりません。


ところが、同じ株式を既に課税口座で、さらに100株保有しているとしましょう(このぶんの時価は同じく200万円)。この100株の取得の際には手数料含めて100万円を支払ったとしましょう。そうすると、NISA保有分と合わせて200株を、300万円で取得したことになり、合算した平均取得単価は300万/200=1.5万円となります。


もし、このうち100株をすぐに200万円で売却したとすると、譲渡益50万円が発生することになり、これに対して税がかかることになります。この税額は、合算前に課税口座の50株を売った場合と同じです。

ロールオーバー」に準じた売買をしたいなら、課税口座の資産と合算される前に!

旧NISA枠の分をロールオーバーしてNISA口座にとどめるということはできません。NISA枠を使って資産を買い付けるにあたって、他に多額の現金を持っている場合は別ですが、「5年前の旧NISA枠の非課税期間が終了するので、それを売って使おう」と考えている方も多いのではないでしょうか。その場合、課税口座に既に同じ銘柄の上場株式等を保有していて含み益が出ている場合、課税口座に合算された後では、すぐ売ったとしても上述の通り多額の税金がかかる恐れがあります。

旧NISA枠の分を超えて、課税口座の分まで売りたいこともあるでしょう。その場合でも合算前に売ったほうがお得になります。旧NISA枠は(購入時の簿価で)120万円、新NISAの枠は成長投資枠だけで240万円、つみたて枠も合わせると年間360万円ですから。上の図の場合で行くと、合算後に100株売る場合の税額は、NISA枠100株と課税口座50株の150株を合算前に売った場合と同じです。

計算してみましょう
NISA枠から課税口座に移る資産 株数(口数)  n_1 一株あたり時価  X 取得単価  X
課税口座の同じ銘柄 株数(口数)  n_2 一株あたり時価  X 取得単価  x

合算後の平均取得単価 x'
 x' = (n_1 X + n_2 x)/(n_1 + n_2)

税率を tとして、合算後に価格 X n株( 0 < n \leq n_1 + n_2)を売却すると、税額は
 tn(X - x') = t n n_2 (X - x)/(n_1 + n_2)

となります。

一方で、非課税期間中に売却するならば税金はかかりませんから、課税口座で含み益が出ている場合( X > x'の場合)売る株数が n_1以下なら非課税期間中に(合算前に)売ったほうが明らかに得です。 n_1 以上の株数を売る場合も、NISA口座のぶんは合算されてしまう前に売ったほうが得になります。

下図の縦軸は課税される含み益の額を表していますが、税額もこれに比例するため、NISA口座の方から優先して売った時の税額と思って見てもらって大丈夫です。結論としては、とにかく売るなら非課税期間中に、ということになります。

売却株数と課税対象額

何か売らないとNISA枠が余る!売って課税されても、NISA口座で買い替えた方が得?(2025更新あり)

(2025-11-22: 説明と図を追加しました。タイトルや構成も更新しました。)

税金を払ってまでNISAに切り替えたほうが得?

2024年から、NISA制度で投資できる最大金額は、つみたて・成長投資枠合わせると一人あたり年間360万、合計1,800万に拡充されました。手持ちの現預金でこの枠を使い切れるなら悩む必要はありません。しかしそうでなくて、すでに特定口座や一般口座など、売却すると売却益に課税される口座(以下、課税口座と呼ぶことにします)の資産を売って資金を作らないと、NISA枠が余ってしまうという場合も多いでしょう。このようなとき、課税口座の資産を取り崩してまでNISAの枠を利用するほうが得なのでしょうか? 場合によって損得が変わるとすると、どういう条件で判断すればよいでしょう?

ネット上では、具体的な数値例でシミュレーションしてどちらが良いといった解説をよく見かけますが、なんとなくモヤモヤします。じゃあ数値が変わったらどうなのか、自分の場合はどうなんだろう?ここでは、ある程度単純化した(でも十分に一般性のある)ケースについて特定の数値にとらわれず一般化して考えてみました。

前提
  • 今(2024年以降)、NISA制度の買い付け枠に余裕があるが、NISA枠で買い付けるためには課税口座の資産を売却しなければいけないとする。
  • 売却を考えている資産の時価 X、その購入価格を xとおく (X >0,  x>0)
  • 今から最終売却までの税引き前リターンを rとおく (r \geq -1)

つまり、税を考えないとすると:

購入時 最終売却時
資産価格  x  X  (1+r)X
仮定
  • 課税口座での売却時に、値上がり益にかかる税率は tで、今も最終売却も同じままとする (1>t>0)
  • 2つの選択肢の差は売却時の課税のみとする。他の違い(損益通算、税以外の費用、運用途中での配当の課税の差、受け渡し期間が生じることによるリターンの差など)は無いものとし、課税口座でもNISAでも同等の税引き前リターン rが得られるとする。 (つまり、課税口座からNISAへ、完全に同じ商品で、ロスなく切り替えるとする。)

(1) 今後も課税口座で持ち続けた場合

今は売らないので、今の時点の税金を考慮する必要はない(今の時点で含み益が出ているかどうかで場合分けしなくてよい)。

最終売却時の税引き前価格は (1+r)X.

① 最終的に値上がり益が出ない( (1+r)X \leq xである)場合: 課税されないので(1+r)Xが得られる.
② 値上がり益が生じる( (1+r)X > x である)場合: 値上がり益 (1+r)X - xtを乗じた税が差し引かれるので, 得られる額は:

 (1+r)X - t( (1+r)X - x) ※ ③と比較しやすい形
 = (1+r)(1-t)X + tx ※ ④と比較しやすい形


(2) 今いったん売却して得た額をNISA口座で同等の商品に投資した場合

最終売却時には税金がかからない。今の時点での税金だけで場合分けすればよい。

③ 今、含み益がない( X \leq x の)場合:  Xが課税されずそのままNISA口座に投資できるため, 最終的に得られる額は  (1+r)X.
④ 今、含み益がある( X > x の)場合: 値上がり益 X-xtを乗じた税をXから差し引き, それをNISA口座で投資して(1+r)倍になるので, 得られる額は:

 (1+r)(X - t(X - x))
 = (1+r)X - (1+r)t(X-x) ※ ①と比較しやすい形
 = (1+r)(1-t)X + (1+r)tx
 = (1+r)(1-t)X + tx + rtx ※ ②と比較しやすい形


(1)と(2)の大小比較

① かつ ③ のケース: どちらでも同じ.
① かつ ④ のケース: ①の方が (1+r)t(X-x)だけ多い. (差は非負. また  (1+r)X \leq x < Xより r < 0).
② かつ ③ のケース: ③の方が t((1+r)X-x)だけ多い. (差は正.)
② かつ ④ のケース: ④の方が rtxだけ多い. (差の符号はrの符号による.)

結論

(1)の選択が結果的に得になるのは:

  • ① かつ ④ (今は含み益が出ていて, 今後のリターンがマイナスで, 最終的に売る際には元本以下まで下がる場合)
  • ② かつ ④ で、rが負の場合(今は含み益が出ていて, 今後のリターンがマイナスだが, 最終的に売る際に元本よりは多い場合)

のいずれかなので, 結局: (1)が結果的に得 \Leftrightarrow X > x かつ  r < 0 (つまり、今は含み益が出ていて今後のリターンがマイナスな場合)となります。

裏を返せば、(2)が結果的に得 \Leftrightarrow X \leq x または  r \geq 0今、含み益が出ていないか、今後のリターンがマイナスでないかのどちらか)です。

要するに:

  • 今、含み益が出ていない(売っても課税されない)課税口座の資産があるなら、無条件で売ってNISA枠の購入資金にあてるのが良い。
  • 含み益が出ている(売ると税金がかかる)資産しかなくても、今後のリターンが結果的にマイナスでないなら、それを売ってNISA枠で買い替えたほうが良い。


ということになります。

なぜ課税されてもNISAに買い替えると得になるのか?

今、大きな含み益が出ていると、売却して税金を払うのは気分的に抵抗があるでしょう。しかし、今後もさらに値上がりするならば、課税口座においておくと最後に払う税金はさらに膨らむのです(②かつ④のケース)。

これについては、次のように考えるとわかりやすいかもしれません。今の評価額から元本を差し引いた値上がり益に税率 tで課税されるということは、評価額全体に tをかけた税を払って、元本のぶんの税額について還付を受けると考えても同じです。

上の図で、NISAへの切り替え時に売った納税と還付の影響は、最終売却時には (1+r)倍に拡大することになります。税引き前の資産総額も税額も、仮想の「還付金」も運用によって (1+r)倍に増えたとみなせます。ところが、課税口座で持ち続けた場合、総額は(したがって税額も)今より (1+r)倍になりますが、元本への税が「還付」されるのは最後のタイミングなので「還付金」は txのままなのです。

つまり、NISAに切り替えると「還付金」を先に受け取れるので、その運用益 rtxだけ得になるというわけです。差がどのくらいのオーダーか、簡単な数値例で見てみると、② かつ ④ のケースで、xが100万円、rが20%とすると約4万円、rが100%なら約20万円の差が出ることになります(tは現在20.315%)。

補注

  • 「結果的に」と書いたのは、言うまでもない当然のことかもしれませんが、リスク資産のリターンrは最終売却時までわからないからです。たとえば株式の場合、10年、20年と長い期間を取れるならrが負になる確率は小さいとまでは事前に言えますが、実際にどうかは事後までわかりません。
  • rが負にならなければ(2)の方が得になります。繰り返しになりますがリスク資産の場合、損する確率ゼロとは言えないので賭けの要素は残ります。ただ、うまくやれば(適切に分散した対象に投資する手数料の低い金融商品を長期保有するなら)(2)に賭けるのはかなり分のいい賭けだと思います。
  • あるいは、rがまず負にならないようなリスクの低い資産(債券など)ならまず確実に(2)の方が得になるでしょう。(だからといってせっかくの非課税口座でそういう期待リターンの低い資産に投資するのが得策とは思いませんが。)
  • ネット上の解説で「含み益があまり大きくなければ(2)が良い」のような言い方をいくつか見かけました。しかし、今回の検討結果を見ると、問題になるのは含み益やリターンの符号だけであって、含み益の絶対値を何か(たとえばリターンの額)と大小比較して有利不利が逆転するということはないように思います。たとえば「②かつ④のケース」でXを所与とすると、含み益が小さい(xが大きい)ほど(2)の有利が大きくなるのはたしかですが、逆に含み益がいくら大きくても(1)と(2)の有利不利が逆転することはありません。
  • 今回の試算がどこまで役立つかは、仮定がどこまで現実的かに依存するでしょう。特に下線部が問題ですが、途中で配当が出て課税されるような場合は(2)の選択がますます有利になります。つまり、そういう商品で(1)の選択をすると、実際には今回の仮定と違って(2)よりもrが小さくなると考えられます。個人的には、(1)か(2)か実際に自分が選択するならまず間違いなく(2)を選ぶことになるでしょう。